第八章
童 子 教 ・ 第八章 郷に入っては郷に従え
ごうに いっては ごうに したがい ぞくに いっては ぞくに したがい郷に入つては郷に随ひ、俗に入つては俗に随ひ
原文 入郷而随郷 入俗而随俗
この章の本文(第40対句〜第47対句)
- 治国土賢皇 勿侮鰥寡矣国土を治むる賢皇(けんわう)は 鰥寡(くはんくわ)を侮(あなど)ること勿れ
- 君子不誉人 則民作怨矣君子は人を誉めず 則ち民(たみ)怨(あた)を作(な)す
- 入境而問禁 入国而問国境(さかひ)に入(い)つては禁(いましめ)を問へ 国に入つては国を問へ
- 入郷而随郷 入俗而随俗郷(ごう)に入(い)つては郷に随ひ 俗に入つては俗に随ひ
- 入門先問諱 為敬主人也門(もん)に入(い)つては先(ま)づ諱(いみな)を問へ 主人を敬(うやま)はん為なり
- 君所無私諱 無二尊号也君所(くんしよ)に私(わたくし)の諱(いみな)無く 無二の尊号なり
- 愚者無遠慮 必可有近憂愚者は遠慮無し 必ず近き憂(うれ)ひ有るべし
- 如用管闚天 似用錐指地管(くだ)を用ひて天を闚(うかが)ふが如し 錐(きり)を用ひて地を指すに似たり
いまのことば
よその土地に入ったら、その土地のやり方を尊重する。
よその家に入ったら、まずその家の人を敬う。
きょうの暮らしでいうと
「郷に入っては郷に従え」——このことわざの、日本の子どもたちにとっての出典がここです。
これは「自分を捨てて周りに合わせろ」ではありません。よその場所には、よその歴史と理由がある。まずそれを知ろうとする姿勢のことです。転校先で、旅行先で、新しい部活で——最初に「ここのやり方」を尊重できる人は、結局いちばん早くなじみ、いちばん信頼されます。
「愚者は遠慮無し、必ず近き憂ひ有るべし」——先を考えない者には、必ず近いうちに心配ごとがやってくる。『論語』の名句も、この章に組み込まれています。
考えてみよう
- 問一新しい場所で「まずここのやり方を知ろう」として、良かった経験はありますか。
- 問二「郷に従う」と「自分を失う」の違いはどこにあるでしょう。
- 問三外国から来た人に日本の「郷」を説明するなら、まず何を伝えますか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——「管を用ひて天を闚ふ」——管の穴から天をのぞく。視野の狭さのたとえで、「管見(かんけん)」という言葉として今も残っています。自分の見ている世界は管の穴かもしれない、という戒めです。