第五章
童 子 教 ・ 第五章 舌は禍の根
ひとは さんずんの したを もって ごしゃくの みを はそんす人は三寸の舌を以つて、五尺の身を破損す
原文 人以三寸舌 破損五尺身
この章の本文(第20対句〜第25対句)
- 車以三寸轄 遊行千里路車は三寸の轄(くさび)を以て 千里の路(みち)を遊行す
- 人以三寸舌 破損五尺身人は三寸の舌を以つて 五尺の身を破損す
- 口是禍之門 舌是禍之根口は是(これ)禍(わざはひ)の門(かど) 舌は是(これ)禍(わざわひ)の根なり
- 使口如鼻者 終身敢無事口をして鼻の如くならしめば 身を終るまで敢へて事無し
- 過言一出者 駟追不返舌過言(くわごん)一たび出(い)づれば 駟追(しつい)舌を返さず
- 白圭玷可磨 悪言玷難磨白圭の玷(たま)は磨くべし 悪言(あくごん)の玷(たま)は磨き難し
いまのことば
車は三寸のくさびで千里を走るが、
人は三寸の舌で、五尺の体を壊してしまう。
きょうの暮らしでいうと
三寸(約9センチ)のくさびが車輪を支えて千里を走らせる。同じ三寸の舌が、五尺(約150センチ)の体を丸ごとだめにする——対句の見事さで、童子教屈指の名句です。
「口は禍の門、舌は禍の根」。ここから「口は災いのもと」という日本語が生まれました。そして「過言一たび出づれば、駟も舌を返さず」——ひとたび出た言葉は、四頭立ての馬車で追いかけても取り戻せない。送信ボタンを押したあとのメッセージと、まったく同じです。
白圭(宝石)の傷は磨けば消せる。でも悪言の傷は磨いても消えない。言葉の傷だけは、あとから直せないのです。
考えてみよう
- 問一言ってしまってから「取り戻せない」と思った言葉はありますか。
- 問二送信前に読み返す自分なりのルールを持っていますか。
- 問三「口をして鼻の如くならしめば」(口が鼻のように無口なら一生無事)——これは極端でしょうか、真理でしょうか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——「駟(し)も舌に及ばず」は『論語』にも出てくる言葉です。四頭立ての馬車は当時の最速の乗り物。今なら「光の速さでも取り消せない」でしょうか。SNS時代にいちばん刺さる千年前の句です。