第四章
童 子 教 ・ 第四章 勇と鈍、壁に耳
いさめる ものは かならず あやうきこと あり勇める者は必ず危きこと有り
原文 勇者必有危 夏虫如入火
この章の本文(第16対句〜第19対句)
- 勇者必有危 夏虫如入火勇める者は必ず危(あやふ)きこと有り 夏の虫の火に入(い)るが如し
- 鈍者亦無過 春鳥如遊林鈍(にぶ)き者は亦(また)過(とが)無し 春の鳥の林に遊ぶが如し
- 人耳者附壁 密而勿讒言人の耳は壁に附く 密(ひそ)かにして讒言(ざんげん)すること勿(なか)れ
- 人眼者懸天 隠而勿犯用人の眼(まなこ)は天に懸(かか)り 隠して犯し用ゆること勿れ
いまのことば
血気にはやる者は、必ず危ない目にあう。夏の虫が火に飛び込むように。
おっとりした者は、大きな過ちがない。春の鳥が林で遊ぶように。
きょうの暮らしでいうと
「飛んで火に入る夏の虫」——このことわざの源流のひとつが、ここにあります。勢いだけで突っ込む者は、自分から危険に飛び込んでいる、と。
対になるのは「鈍き者は亦過無し」。のんびりした人は、派手さはないけれど、大きな失敗もしない。春の林で遊ぶ鳥のたとえの、なんとのどかなこと。童子教は「速い・強い」だけを良しとしません。
続く「人の耳は壁に附く」——壁に耳あり、の原型です。陰口は必ず漏れる。千年前から、そして今のグループチャットでも、まったく同じです。
考えてみよう
- 問一「勢いで突っ込んで失敗した」経験と「慎重で助かった」経験、両方ありますか。
- 問二「鈍さ」が強みになる場面には、どんなものがあるでしょう。
- 問三「ここだけの話」が漏れるのはなぜだと思いますか。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——「壁に耳あり障子に目あり」ということわざは、この「人耳者附壁 人眼者懸天(人の耳は壁に附く、人の眼は天に懸る)」の系譜にあります。寺子屋の教科書が、日本人の口ぐせを作っていきました。