十六
東 海 道 ・ 新 居 宿
浜名湖はもともと淡水の湖でした。大地震と津波で海とつながり、旅人は湖口を船で渡り、そのたもとの関所で厳しい取り調べを受けました。
いまのことば
浜名湖は室町時代の地震で海とつながった汽水湖。
渡し船の先に待つ新居関所は、東海道でも指折りの厳しさだった。
地形が変わった日
室町時代の明応地震(1498年)の津波などで、浜名湖と海を隔てていた砂州が切れ、湖は海水の混じる汽水湖になりました。切れた場所は「今切(いまぎれ)」——「いま切れた」がそのまま地名です。
陸路が断たれたため、舞坂宿から新居宿へは今切の渡しで船を使います。そして新居側には関所。「入り鉄砲に出女」——江戸へ入る武器と、江戸から逃れる大名の妻子を取り締まる、幕府の重要チェックポイントでした。
地震が地形を変え、地形が交通を変え、交通が制度を呼ぶ。災害の記憶が、地名と関所になって残っているのです。
考えてみよう
- 問一「今切」のように、災害や地形の出来事が由来の地名を、自分の地域で探してみましょう。
- 問二浜名湖が汽水になって、獲れるものはどう変わったでしょう(うなぎ・あさり…)。
- 問三関所は何を、なぜ取り締まったのか。「入り鉄砲に出女」を説明してみましょう。
答えはひとつではありません。声に出して、外に出て、確かめながらどうぞ。
豆知識——新居関所の建物は、全国で唯一、江戸時代の関所建築が現存するものです(国の特別史跡)。浜名湖がうなぎ養殖の本場になったのは、汽水という地形の贈り物あってこそでした。