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東海道・蒲原宿

しんしんと雪の積もる夜の宿場を、かさをすぼめた旅人が行く——広重の「蒲原かんばら夜之雪」は五十三次の最高傑作。ただし蒲原かんばらは、めったに雪の降らない土地です。

お子さんと保護者の方へ。東海道・蒲原宿を、いっしょに確かめましょう。

いまのことば

東海道の蒲原宿とは?

広重は、温暖な蒲原かんばらをあえて深い雪の夜に描いた。
事実ではなく心を描く——それが浮世絵の風景だった。

描かれた静けさ

蒲原かんばら(静岡市清水区)は駿河するが湾ぞいの温暖な宿場。ところが広重は、ここを一面の雪の夜として描きました。音が全部吸い込まれたような、しんとした画面。五十三次シリーズの最高傑作と呼ばれます。

なぜ降らない雪を描いたのか。確かなことは分かりません。ただ、旅の途中で心にたまる静けさや寂しさを表すのに、雪の夜ほどふさわしい景色はなかった——多くの人がそう読んできました。

写真のように正確なことと、心に真実であること。絵はどちらを選んでもいい。孝行話の雪のたけのこ(童子教どうじきょう)と同じで、事実でないものが、真実を伝えることがあるのです。

考えてみよう

  • 問一「正確ではないが、気持ちは伝わる」表現を、ほかに知っていますか。
  • 問二あなたの町を一枚の絵にするなら、実際と違えてでも描きたい景色はありますか。
  • 問三写真がある時代に、絵で風景を描く意味は何でしょう。

答えはひとつではありません。地図を広げながら考えると、また違って見えてきます。

豆知識——「蒲原かんばら夜之雪」は国内外の美術館が所蔵する超有名作で、切手にもなりました。現地の旧宿場には記念碑があり、温暖な町並みと名画の雪を見比べられます。
原文について
この記事が扱っている『東海道五十三次』は、江戸時代の五街道のひとつ。宿場や道中の様子は、当時の道中記や名所図会に記録されています。
原本(江戸期などの版本)は、国立公文書館 デジタルアーカイブ『東海道名所図会』で画像を見られます。
このページの現代語訳・解説・設問は、株式会社士心が作成したものです。特定の校訂本にもとづくものではありません。 表記や区切り方は、読みやすさのために整えています。原文にあたるときは、上の所蔵先でお確かめください。

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