第八題
塵 劫 記 ・ 第 八 題 百五減算
相手に、1から100までの好きな数をこっそり決めてもらいます。聞くのは三つだけ。「3で割った余りは?」「5で割った余りは?」「7で割った余りは?」——それだけで、決めた数をぴたりと当ててみせましょう。
やってみよう
たとえば相手の答えが「余り2・余り3・余り4」だったとします。さて、もとの数は?
たねのヒント
3の余りには70を、5の余りには21を、7の余りには15をかけて、ぜんぶ足してみてください。大きすぎたら105を引きます。
たねあかし
- 3で割った余りに70をかける(2×70=140)。
- 5で割った余りに21をかける(3×21=63)。
- 7で割った余りに15をかける(4×15=60)。
- ぜんぶ足す:140+63+60=263。
- 105より大きければ、105を引けるだけ引く:263−105−105=53。
答え 相手の数は 53(この「105を引く」から百五減算の名がつきました)
暮らしとつながる
なぜ70・21・15なのか。70は「5と7で割り切れて、3で割ると1余る数」。21は「3と7で割り切れて、5で割ると1余る数」。15は「3と5で割り切れて、7で割ると1余る数」。それぞれの余りの情報だけを運ぶ数を足し合わせているのです。
この仕組みは「中国剰余定理」という名で、現代の暗号やコンピュータの計算に使われています。あなたが今日おぼえた数当てマジックの種は、インターネットの安全を守っている数学と同じものです。
考えてみよう
- 問一家族に3回質問して、実際に当ててみましょう。何回成功しましたか。
- 問二101以上の数だと、この方法はどこで困るでしょう(105で割った余りしか分からない、がヒント)。
- 問三余りだけで元が分かる——「一部の情報から全体を復元する」例は、ほかにもあるでしょうか。
マジックは、種を明かさず演じてこそ。たねあかしは、聞かれてから。
豆知識——この数当ては中国の古い数学書に起源があり、日本では塵劫記が広めました。江戸の子は、そろばん塾で覚えたこの技を、家で披露して家族を驚かせたことでしょう。数学が「見せる芸」だった時代です。