第九題
塵 劫 記 ・ 第 九 題 継 子 立 て
30個の石を輪に並べ、10番目ごとに取り除いていく。どの石がいつ抜けるかは——実は、始める前からすべて決まっています。
いまのことば
輪になった30から10番目ごとに除くと、抜ける順は毎回同じ。
並び方さえ工夫すれば、狙った相手だけを残すことも、抜くこともできる。
やってみよう(10人版)
30人は大変なので、まず10人(またはおはじき10個)を輪にして、3番目ごとに抜いていきましょう。
- 1〜10の番号をつけて輪にする。1から数え始め、3番目(3番)を抜く。
- 続きから数えて、また3番目を抜く……を最後のひとつまで。
- 抜ける順番は必ず——3, 6, 9, 2, 7, 1, 8, 5, 10, 4。何度やっても同じです。
最後まで残るのは 4番。始める前から、結果はすべて決まっています。
数え歌のからくり
塵劫記に載る「継子立て」には物語がついています。継母が、実子と継子をわざと交ぜて輪に並べ、10番目ごとに除いて跡継ぎを決めようとする——数え方は公平に見えて、並べ方に仕掛けがある、という話です。
実際に計算すると、30個の輪で10番目ごとに抜く場合、抜ける順は10, 20, 30, 11, 22, 3, 15, 27, 9, 24, 7, 23, 8, 26, 14…と、完全に決まっています(この並びは計算機でも、おはじきでも、必ず再現できます)。つまり「くじ引き」のふりをした、結果の決まった儀式を作れてしまう。
公平に見える手続きが、本当に公平とはかぎらない——数学は、それを見破る道具にもなります。この種の問題は「ヨセフスの問題」の名で、いまも情報科学で研究されています。
考えてみよう
- 問一おはじき10個で3番目ごとの継子立てをやり、上の順番どおりになるか確かめましょう。
- 問二「公平に見えるのに、結果が決まっている仕組み」は、身のまわりにないでしょうか。
- 問三順番や数え方を変えると、最後に残る位置はどう変わるか実験してみましょう。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——同じ構造の問題が、古代ローマの歴史家ヨセフスの逸話として西洋にも伝わっています。東西で別々に、同じ数理にたどり着いていました。