い
いろは歌
いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす色は匂へど散りぬるを 我が世誰ぞ常ならむ
有為の奥山今日越えて 浅き夢見じ酔ひもせず
いまのことば
いろは歌の意味と全文は?
花は美しく咲いても、散ってしまう。この世のだれが、変わらずにいられよう。
人生の深い山を今日越えて、はかない夢は見まい、酔いもすまい。
ことばの景色
この歌のすごさは、二つあります。ひとつは、四十七のかなを、一字も重複させずに全部使い切っていること。パズルとして完璧です。
もうひとつは、そのパズルの制約の中で、無常のこころをうたう一編の詩になっていること。童子教で読んだ「生者必滅」の世界観が、かなの練習歌の中に折りたたまれています。
寺子屋の子どもたちは、この歌で文字を覚えました。「いろは順」は明治に五十音に取って代わられるまで、日本の標準の並び順。いまも「いろはのい」という言い回しに生きています。
考えてみよう
- 問一声に出して読んでみましょう。七五調のリズムが感じられますか。
- 問二使えるかなを一度ずつ、で意味の通る文を作る——どれほど難しいか、短い文で試してみましょう。
- 問三「いろは」のように、暮らしに残っている古い言葉の並びを、ほかに知っていますか。
答えはひとつではありません。声に出して読んでから考えると、また違って見えてきます。
豆知識——いろは歌の作者は分かっていません(弘法大師空海の作という伝承がありますが、研究では平安中期以降の成立とされます)。作者不明のまま千年使われ続けた、日本でいちばん有名な「無名の歌」です。
原文について
この記事が扱っている『いろは歌』は、四十七文字を一度ずつ使い切る誦文。手習いの最初に習うものでした。
このページの現代語訳・解説・設問は、株式会社士心が作成したものです。特定の校訂本にもとづくものではありません。
表記や区切り方は、読みやすさのために整えています。