一
実語教・第一句
やま たかきが ゆえに たっとからず山高きが故に貴からず
き あるを もって とうとしと なす樹有るを以て貴しと為す
原文 山高故不貴 以有樹為貴
いまのことば
山高きが故に貴からずの意味は?
山は、高いから立派なのではない。
木が豊かに茂っているから、立派なのだ。
きょうの暮らしでいうと
背の高さ、足の速さ、テストの点数、フォロワーの数——「高さ」は、外からすぐ見えます。だから、つい高さで比べたくなります。
でも、千年前に書かれたこの教科書は、いちばん最初の一句で、こう言います。外から見える高さではなく、その中で何が育っているか。木のない岩山がさびしいように、どれだけ高くても、中に育つものがなければ、人は集まりません。
実語教は、この「山」のたとえから始めて、次の句でいよいよ「人」の話に入っていきます。
考えてみよう
- 問一あなたのまわりで「高さ」で比べられているものには、どんなものがありますか。
- 問二あなたという山には、いま、どんな木が育っていますか。小さな芽でもかまいません。
- 問三友だちの中に育っている「木」を、ひとつ見つけて言葉にしてみましょう。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——『実語教』は平安時代の末ごろに生まれ、江戸時代には寺子屋の定番の教科書として、日本中の子どもが最初に学ぶ一冊でした。明治の世に学校の教科書が変わり、いまでは読む人の少なくなったこの一冊を、こころの間では一句ずつ、現代のことばで読み直していきます。
原文について
この記事が扱っている
『実語教』は、平安末から鎌倉期に成立したとされる教訓書。江戸の寺子屋でもっとも広く使われた教科書のひとつです。
原本(江戸期などの版本)は、
国立公文書館 デジタルアーカイブ『実語教』で画像を見られます。
このページの現代語訳・解説・設問は、株式会社士心が作成したものです。特定の校訂本にもとづくものではありません。
表記や区切り方は、読みやすさのために整えています。原文にあたるときは、上の所蔵先でお確かめください。