CCN 寺子屋
科学の間へ戻る

江 戸 の 科 学 ・ 六

「たまや〜」の掛け声で夜空を見上げる江戸の人々。ただし、その花火は今と違って、ほぼ橙色一色でした。

いまのことば

江戸の花火は黒色火薬の「和火」で、色はほのかな橙だけ。
赤や青の花火は、明治以降に金属の炎色反応が使われてから。

色のない花火の美

両国の川開きの花火は、江戸の夏最大のイベント。鍵屋・玉屋の二大花火師が腕を競い、「かぎや〜」「たまや〜」の掛け声が生まれました。

けれど当時の花火は、硝石・硫黄・木炭の黒色火薬だけで作る「和火(わび)」——ほのかな橙色一色。今のような赤・緑・青は、明治以降に金属の粉(ストロンチウム=赤、銅=青緑など)を混ぜる技術が入ってからです。理科で習う炎色反応が、夜空の色の正体です。

色がないぶん、江戸の人は光の消えぎわ、余韻、闇とのコントラストを味わいました。制約の中の美——蒲原の雪の絵と同じ、江戸の美学です。

考えてみよう

答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。

豆知識——「玉屋」は火事を出して江戸を追われ、一代で消えた花火師です。それでも掛け声だけは「たまや〜」が残りました。江戸っ子は、消えたものの名を呼び続けたのです。
前へ次へ