三
江 戸 の 科 学 ・ 三
江戸の一時間は、夏と冬で長さが違いました。日の出から日の入りまでを六等分——伸び縮みする時間に、時計のほうを合わせたのです。
いまのことば
江戸の時刻は、昼と夜をそれぞれ六等分する「不定時法」。
季節で一刻の長さが変わり、和時計はそれに合わせて作られた。
時間のものさし
「明け六つ」(夜明け)から「暮れ六つ」(日暮れ)までが昼。それを六等分したのが一刻(いっとき)です。夏は昼が長いので昼の一刻は長く、冬は短い。時間のほうが季節に合わせて伸び縮みする——自然に寄りそった時刻制度でした。
困るのは時計職人です。西洋の機械時計は一定の速さで動くのに、江戸の時刻は変わる。そこで職人たちは、文字盤の目盛りを動かせる時計や、昼用と夜用で速さを切り替える時計を発明しました。世界でも珍しい、日本だけの機械技術です。
おやつの「八つ」は八つ時(いまの午後2〜3時ごろ)から。時の鐘の数で時刻を知る暮らしの名残が、言葉に残っています。
考えてみよう
- 問一日の出と日の入りに合わせて暮らすと、生活はどう変わるでしょう。
- 問二「時間に自然を合わせる」現代と「自然に時間を合わせた」江戸。どちらが好みですか。
- 問三「おやつ」「正午」など、時刻の古い言葉をほかにも探してみましょう。
答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。
豆知識——明治6年(1873年)に日本は現在の定時法・太陽暦に切り替えました。和時計はその日から一斉に「使えない機械」に。技術が制度とともに生きていたことを教えてくれます。