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往来物・国尽くし

武蔵むさし、相模さがみ、駿河するが、遠江とおとうみ、三河、尾張——寺子屋の子どもたちは、日本中の国の名前を、節をつけて唱えて覚えました。

お子さんと保護者の方へ。往来物・国尽くしを、いっしょに確かめましょう。

いまのことば

国尽とは?

「国尽」は、全国六十余州の国名を順に並べた暗唱教材。
声に出して覚えた地名は、旅の地図にも、証文の宛先にも役立った。

唱える地図帳

江戸時代の日本は六十余りの「国」に分かれていました。武蔵むさし(東京・埼玉あたり)、相模さがみ(神奈川)、駿河するが(静岡中部)……。寺子屋では、この国名を道順に並べた「国尽(くにづくし)」を、手習いと素読そどくで覚えました。

実語教じつごきょうと同じで、節をつけて声に出すと、羅列が歌になる。東海道を下る順に唱えれば、頭の中に日本地図が組み上がっていきます。商いの手紙の宛先にも、旅の計画にも、国名の知識は欠かせない実用でした。

旧国名は、いまも新幹線や特急の名前(ひかりは別として、あずさ・しなの・いなほ…路線名の武蔵むさし野線・常磐線)、名産品(讃岐さぬきうどん・信州しんしゅうそば)に生きています。国尽は、現代日本語の中にまだ流れているのです。

考えてみよう

  • 問一自分の住む場所の「旧国名」を調べてみましょう。市町村名や駅名に残っていますか。
  • 問二「讃岐さぬきうどん」「信州しんしゅうそば」のように旧国名つきの名物を、いくつ挙げられますか。
  • 問三覚えたいものを「順路の歌」にする勉強法を、何かで試してみましょう。

答えはひとつではありません。おうちの人と話しながら考えるのも、よい学び方です。

豆知識——六十余州の区分は7世紀ごろの律令制に始まり、明治の廃藩置県まで千年以上使われました。県名より地名として古い——「武蔵むさし」は「東京都」の何倍も長い歴史を持つ名前です。
この記事について
この記事は、江戸時代の道具・技術・遊び・くらしを紹介したものです。もとになる一冊の古典があるわけではありません。
往来物が寺子屋の学習書だったことと、地理をあつかう分類があることは、国立教育政策研究所 教育図書館「往来物デジタルアーカイブ」によります。
本文は株式会社士心が作成したものです。年号や数値は、読みやすさのために概数で書いている箇所があります。

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