小学校の英語の授業は、3・4年生の「外国語活動」と5・6年生の「外国語科」という、性格の異なる2つの学びに分かれている。前者は教科ではない体験的な活動で通知表の評定はつかず、後者は算数や国語と同じ「教科」になり、成績(評定)がつく。この違いは、2017年(平成29年)に改訂され2020年度(令和2年度)から全面実施された学習指導要領によって定められたものである。
出典:文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編」/文部科学省「平成29年改訂の小・中学校学習指導要領に関するQ&A(外国語,外国語活動に関すること)」/文部科学省「外国語教育について知る」/文部科学省「小学校学習指導要領解説」
外国語活動と外国語科、何が違うのか(全体像)
2017年3月31日、文部科学省は学校教育法施行規則の一部改正とともに小学校学習指導要領を改訂した。新しい学習指導要領は2020年度(令和2年度)から全面的に実施され、2018年度(平成30年度)からは一部が移行措置として先行実施されている。この改訂の柱の一つが、小学校英語教育の「早期化」と「教科化」である。
改訂前は、小学校5・6年生だけに「外国語活動」(教科ではない活動)が置かれていた。改訂後は、その「外国語活動」を3・4年生に前倒しし、5・6年生には新たに教科としての「外国語科」を置くという、2段階の仕組みに変わった。つまり、学年が上がるほど英語の学びの「重さ」が増していく設計になっている。
「外国語活動」と「外国語科」は、名前は似ているが、法令上の位置づけが違う。前者は道徳科や特別活動と同じ「教科ではない教育活動」であり、後者は国語や算数と同じ「教科」である。この違いが、授業時数・評価・指導内容のすべてに反映されている。
3・4年生は「外国語活動」──教科ではない学び
3年生・4年生で行われる「外国語活動」は、学校教育法施行規則が定める「教科」には含まれない教育活動である。学習指導要領は、外国語活動の目標を次のように定めている。
「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,話すことの言語活動を通して,コミュニケーションを図る素地となる資質・能力を…育成することを目指す」
ここで示されている領域は「聞くこと」「話すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」の3つだけであり、「読むこと」「書くこと」は目標として設定されていない。文部科学省の解説は、この段階を「コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力」(外国語科)の一歩手前にある「素地」と位置づけている。
| 項目 | 外国語活動(3・4年生) |
|---|---|
| 教科としての位置づけ | 教科ではない教育活動(道徳科・特別活動と同じ枠) |
| 年間の授業時数 | 1学年あたり年間35単位時間(週1コマ程度)。3・4年生の2学年で計70単位時間 |
| 目標の領域 | 聞くこと/話すこと[やり取り]/話すこと[発表]の3領域 |
| 読み書きの扱い | 目標として設定されていない(文字は音声に添える形で見せる程度) |
| 評価の方法 | 数値による評定は行わず、児童の学習状況を文章で記録する |
| 育成する力の位置づけ | コミュニケーションを図る「素地」となる資質・能力 |
1単位時間は45分と定められている(学校教育法施行規則 別表第一)。3・4年生の外国語活動は、この45分授業を年間35回、2学年合わせて70回行う計算になる。
5・6年生は「外国語科」──教科になり、成績がつく
5年生・6年生になると、英語は「外国語科」という教科になる。国語・算数・理科・社会などと並ぶ正式な教科であり、検定教科書を使って指導される。学習指導要領は、外国語科の目標を次のように定めている。
「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動を通して,コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を…育成することを目指す」
外国語活動の3領域に「読むこと」「書くこと」を加えた5領域が目標になる点が、3・4年生との最大の違いである。文部科学省のQ&Aは、教科化にともなう評価の変化について次のように説明している。
「評価については…資質・能力の3つの柱で再整理した新学習指導要領の下での指導と評価の一体化を推進する観点から,観点別学習状況の評価の観点についても,これらの資質・能力に関わる『知識・技能』,『思考・判断・表現』,『主体的に学習に取り組む態度』の3観点で行い,評定を行うことになります」(文部科学省「平成29年改訂の小・中学校学習指導要領に関するQ&A(外国語,外国語活動に関すること)」問2)
つまり、5・6年生の外国語科は、この3つの観点にもとづいて評定がつき、通知表の成績になる。これは3・4年生の外国語活動には存在しない仕組みである。ただし、観点別の評定だけでは示しきれない児童一人一人の良い点や進歩の状況については、日々の様子や所見を通じて伝えることも同時に求められている。
| 項目 | 外国語科(5・6年生) |
|---|---|
| 教科としての位置づけ | 教科(国語・算数などと同じ枠。検定教科書を使用) |
| 年間の授業時数 | 1学年あたり年間70単位時間(週2コマ程度)。5・6年生の2学年で計140単位時間 |
| 目標の領域 | 聞くこと/読むこと/話すこと[やり取り]/話すこと[発表]/書くことの5領域 |
| 評価の方法 | 「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点で評定がつく |
| 育成する力の位置づけ | コミュニケーションを図る「基礎」となる資質・能力 |
3・4年生の外国語活動(計70単位時間)と5・6年生の外国語科(計140単位時間)を合わせると、小学校4年間で計210単位時間、英語に触れることになる。
学習指導要領が示す目標――聞く・話す・読む・書くの扱い方
小学校の英語教育は、中学校・高等学校と同じ「聞くこと」「読むこと」「話すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」「書くこと」の5領域を土台に組み立てられている。ただし、小学校段階でこの5つすべてを中学校と同じレベルで求めているわけではない。
3・4年生の外国語活動では、「読むこと」「書くこと」は指導していない。文部科学省のQ&Aは、5・6年生の外国語科における読み書きの扱いについて、次のように明確にしている。
「『読むこと』,『書くこと』については,中学年の外国語活動において指導していないことから,高学年の外国語科において慣れ親しませることから指導する必要があるため,『聞くこと』,『話すこと』と同程度までの指導を求めるものではないことに留意する必要があります」(前掲Q&A 問3)
具体的に外国語科で求められているのは、次のような内容である。
- 活字体で書かれたアルファベットの文字を見て、その名称を発音できるようにする
- アルファベットの大文字・小文字を、四線(英語の練習で使う4本線のノート)の上に書けるようにする
- 十分に音声で慣れ親しんだ簡単な語句や表現を、語順を意識しながら書き写せるようにする
- 自分のことや身近なことについて、例文を参考にしながら書けるようにする
また、小学校の外国語科では、「動名詞」「過去形」といった文法用語や、活用のルールを教える指導は行わない。“I like playing soccer.”(好きなことを言う)や“I enjoyed fishing.”(経験を伝える)のように、実際のやり取りの中で使える表現として、聞いたり話したりしながら慣れさせることが基本になっている。
小学校で扱う語数の目安
学習指導要領は、小学校の外国語活動・外国語科で扱う語数の目安を「600~700語程度」と定めている。文部科学省の解説は、この範囲について次のように説明している。
「2学年間に指導する語は,今回の改訂で第3学年及び第4学年において第4章外国語活動を履修する際に取り扱った語を含む600~700語程度の語とした」(前掲解説 第2部 第2章)
この600~700語には、3・4年生の外国語活動で扱う語も含まれている。文部科学省の解説では「600語」を指導する語数の下限、「700語」を指導で取り扱う一定の目安としており、「700語程度を上限とするという趣旨ではない」と注記している。つまり、700語を超えて教材に触れること自体は否定されていない。
また、この語数には、聞いたり読んだりして意味が分かればよい語(受容語彙)と、話したり書いたりして自分から使える語(発信語彙)の両方が含まれている。小学校段階では、初めて外国語に触れることを踏まえ、「聞くこと」「話すこと」で求めるレベルと「読むこと」「書くこと」で求めるレベルに差があることが前提になっている。すべての語を覚えて使いこなすことを求めているわけではない、という点も解説にはっきりと書かれている。
中学校の外国語科へどうつながるか
小学校で英語が早期化・教科化されたことで、中学校の指導の前提も変わった。文部科学省のQ&Aは、中学校の指導における留意点を次のように説明している。
「小学校の外国語活動は中学年から始まるものの,現行と同様,『読むこと』及び『書くこと』の領域は扱いません。また,高学年で教科となり,『読むこと』及び『書くこと』も扱うことになるものの,『慣れ親しみ』としており,『聞くこと』や『話すこと』と同等の指導を求めるものではないことに留意する必要があります」(前掲Q&A 問11)
この文章に続けて、文部科学省は「小学校で早期化・教科化されたとは言え,音声によるコミュニケーションが重視されており,中学校卒業時には,『聞くこと』,『読むこと』,『話すこと』及び『書くこと』の技能の総合的な育成がなされていなければなりません」と述べている。つまり、小学校段階で読み書きの土台が「慣れ親しみ」の水準までしか作られていないことを前提に、中学校で本格的な読み書きの指導が積み上げられる、という設計になっている。
言い換えると、小学校の外国語活動・外国語科は英語の全課程の「入り口」であり、中学校卒業までの間に4つの技能を総合的に育てていく長い橋の、最初の部分を担っている。小学校時点でどこまで進んでいるかを級や点数で急いで測るよりも、この制度が想定している段階を踏んでいるかどうかを見るほうが、実態に近い。
保護者が家でできること
ここからは当社の考え方になる。学習指導要領が示す3・4年生の外国語活動、5・6年生の外国語科という枠組みを踏まえると、家庭でできることは、学校の授業を先取りすることではなく、学校が土台としている「音声によるコミュニケーション」を、家庭でも自然に続けられる場を用意することだと考えている。
- 教科書のような正確さを求めず、聞いた音をそのまま真似して発音してみる時間を、短くても日常の中に置く。
- 読み書きは「慣れ親しみ」の段階であることを踏まえ、単語テストのように正誤を厳しく問う場にしない。
- アルファベットを四線に書く練習は、学校で新しく始まったばかりの技能であることを前提に、急がせない。
- 英語に触れた量そのものではなく、「聞こえた」「言えた」という児童自身の実感を、保護者が言葉にして返す。
学習指導要領が「素地」「基礎」という言葉を使っているとおり、小学校段階はまだ土台づくりの時期である。家庭での関わりも、成果を急いで測るのではなく、学校で始まった活動を児童が嫌にならない形で継続できるよう、そばで見守ることが中心でよいと考えている。
士心塾では
士心塾オンライン校では、学習指導要領が土台とする「聞くこと」「話すこと」を軸に、英検5級から準1級までの単語・例文(10,160語)を、音声つきの教材として登録なしで公開している。学年と級を一律に結びつけることはせず、児童一人一人が学校の外国語活動・外国語科で積み上げている段階に合わせて、教材を選んで使えるようにしている。
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