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中学校と高校の英語で、学習指導要領は何を求めているか

2026年9月8日 / 士心塾 オンライン校

中学校と高校の英語の授業がどこまで何を教えるかは、文部科学省の学習指導要領という一次資料に、目標・扱う語数・「話すこと」の分け方まで具体的に定められている。中学校卒業までに扱う語数の目安は小学校ぶんを含めて2,200〜2,500語程度、高校卒業までは4,000〜5,000語程度。「話すこと」は「やり取り」と「発表」に分かれ、どちらも文法や語彙の知識を単独で教えるのではなく、言語活動を通して指導するという考え方が土台になっている。

出典:文部科学省「平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)」中学校学習指導要領(平成29年文部科学省告示第64号)本文PDF高等学校学習指導要領(平成30年文部科学省告示第68号)本文PDF文部科学省「外国語教育について知る」日本英語検定協会「英検CSEスコア」

中学校の外国語(英語)は何を目指しているか

中学校の外国語(英語)は、平成29年3月に告示された中学校学習指導要領(平成29年文部科学省告示第64号)の「第2章 第9節 外国語」に定められている。目標はまず教科全体として次の3つの資質・能力に整理されている。

  • 外国語の音声・語彙・表現・文法・言語の働きなどを理解し、聞くこと・読むこと・話すこと・書くことによる実際のコミュニケーションで活用できる技能を身に付ける
  • 日常的な話題や社会的な話題について、外国語で簡単な情報や考えなどを理解したり、これらを活用して表現したり伝え合ったりする力を養う
  • 外国語の背景にある文化への理解を深め、聞き手・読み手・話し手・書き手に配慮しながら、主体的にコミュニケーションを図ろうとする態度を養う

この3つを、英語という言語の学習に落とし込むと、学習指導要領の本文では「聞くこと」「読むこと」「話すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」「書くこと」の五つの領域別に、それぞれ具体的な目標が示されている。例えば「聞くこと」では「はっきりと話されれば、日常的な話題について、必要な情報を聞き取ることができるようにする」、「読むこと」では「日常的な話題について、簡単な語句や文で書かれたものから必要な情報を読み取ることができるようにする」といった形で、話題の種類(日常的/社会的)と、求める力のレベルが対になって書かれている。

中学校で扱う語数の目安(小学校ぶんを含めた累計)

学習指導要領の本文には、指導する語の数についても具体的な目安が示されている。中学校の「知識及び技能」の項目には、次のように書かれている。

「1に示す五つの領域別の目標を達成するために必要となる、小学校で学習した語に1600〜1800語程度の新語を加えた語」(中学校学習指導要領 第2章第9節外国語 第2の2の⑴ウ)

ここでいう「小学校で学習した語」は、小学校学習指導要領(平成29年文部科学省告示第63号)第2章第10節外国語の第5・6学年の内容にある「第3学年及び第4学年において第4章外国語活動を履修する際に取り扱った語を含む600〜700語程度の語」を指す(文部科学省「外国語教育について知る」の小学校・中学校の解説一覧からも各学習指導要領解説にあたることができる)。つまり中学校の1600〜1800語は、小学校からの積み上げに加える新語の目安であり、単独の合計ではない。両方を足すと、中学校卒業までの語数の目安は次のようになる。

段階語数の目安
小学校(第5・6学年、外国語活動ぶんを含む)600〜700語程度
中学校で新たに指導する語小学校の語に1600〜1800語程度を追加
中学校卒業までの累計2200〜2500語程度

この2200〜2500語程度という数字は、平成29年告示の学習指導要領にもとづくものである。これより前の平成20年告示の学習指導要領では、中学校で指導する語数は「1200語程度」とされており、小学校では外国語が教科として扱われていなかった。改訂によって語数の目安が大きく増えている点は、学習指導要領の本文を確認すればそのまま読み取れる。

高校の外国語(英語)―科目が「英語コミュニケーション」と「論理・表現」に分かれる

高校の外国語(英語)は、平成30年3月に告示された高等学校学習指導要領(平成30年文部科学省告示第68号)の「第2章 第8節 外国語」に定められている。中学校までと大きく違うのは、科目の名前と構成である。かつての「コミュニケーション英語」「英語表現」「英語会話」に代わって、現行の学習指導要領では次の6科目に整理されている。

科目群扱う領域
英語コミュニケーションⅠ・Ⅱ・Ⅲ聞くこと/読むこと/話すこと[やり取り]/話すこと[発表]/書くことの5領域
論理・表現Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ話すこと[やり取り]/話すこと[発表]/書くことの3領域

教科全体の目標(第8節の第1款)は、中学校と同じ骨格で「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の3つに整理されている。そのうえで、「英語コミュニケーション」は聞く・読む・話す・書くの5領域をバランスよく育てる科目、「論理・表現」は話すこと(やり取り・発表)と書くことに絞り、ディベートやディスカウンション、スピーチやプレゼンテーションなど、論理の構成や展開を工夫して伝える力を育てる科目、という役割分担になっている。学習指導要領の本文では、論理・表現Ⅰの目標として「日常的な話題や社会的な話題について……ディベートやディスカッションなどの活動を通して、聞いたり読んだりしたことを活用しながら……意見や主張などを論理の構成や展開を工夫して話して伝え合うことができるようにする」と書かれている。

高校卒業までに扱う語数の累計

語数の目安は「英語コミュニケーション」の3科目に定められており、「論理・表現」は独自の新語を追加するのではなく、英語コミュニケーションⅠで示された語などを使って指導するとされている。本文の記述は次のとおりである。

  • 英語コミュニケーションⅠ:「小学校及び中学校で学習した語に400〜600語程度の新語を加えた語」
  • 英語コミュニケーションⅡ:「『英語コミュニケーションⅠ』の2の⑴のウの(ア)で示す語に700〜950語程度の新語を加えた語」
  • 英語コミュニケーションⅢ:「『英語コミュニケーションⅡ』の2の⑴で示す語に700〜950語程度の新語を加えた語」

中学校卒業時点の2200〜2500語程度に、この3科目分を順に加えていくと、高校卒業までの累計は次のようになる。

時点語数の目安(累計)
中学校卒業まで2200〜2500語程度
+英語コミュニケーションⅠ(400〜600語)2600〜3100語程度
+英語コミュニケーションⅡ(700〜950語)3300〜4050語程度
+英語コミュニケーションⅢ(700〜950語)高校卒業までに4000〜5000語程度

この4000〜5000語程度という累計は、学習指導要領の本文に示された各科目の「新語の目安」を単純に足し合わせたものであり、文部科学省の文書に一つの総数としてそのまま書かれているわけではない。目安であることと、平成29年・30年告示の学習指導要領にもとづく数字であることは、あわせて確認しておきたい点である。

「話すこと」は「やり取り」と「発表」に分かれている

中学校・高校の学習指導要領を読むと、「話すこと」が一つの領域としてまとめられていないことに気づく。中学校の目標では「⑶話すこと[やり取り]」「⑷話すこと[発表]」として別項目になっており、それぞれに次のような目標が示されている。

  • 話すこと[やり取り]:「関心のある事柄について、簡単な語句や文を用いて即興で伝え合うことができるようにする」など、その場で相手とやり取りを続ける力
  • 話すこと[発表]:「日常的な話題について、事実や自分の考え、気持ちなどを整理し、簡単な語句や文を用いてまとまりのある内容を話すことができるようにする」など、事前に準備してまとまった内容を話す力

高校の英語コミュニケーション・論理・表現でも同じ区分が引き継がれており、論理・表現ではディベートやディスカッションが「話すこと[やり取り]」、スピーチやプレゼンテーションが「話すこと[発表]」の代表的な言語活動として本文に例示されている。つまり学校の授業でも、即興で会話を続ける力と、準備して発表する力は、別の目標として扱われているということになる。

言語活動を通して指導する、という考え方

学習指導要領の「内容」の項目を読むと、語彙や文法などの「言語材料」は、それ単独で理解させることを目的にしていないことが繰り返し書かれている。中学校の本文では、音声・語彙・文法などの知識・技能について「実際に英語を用いた言語活動を通して……理解するとともに、言語材料と言語活動とを効果的に関連付け、実際のコミュニケーションにおいて活用できる技能を身に付けることができるよう指導する」とされている。高校の目標(第1款)でも「外国語による聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動及びこれらを結び付けた統合的な言語活動を通して……資質・能力を……育成することを目指す」と、同じ考え方が引き継がれている。

文法事項についても「意味のある文脈でのコミュニケーションの中で繰り返し触れることを通して活用すること」という表現が中学校・高校いずれの本文にも出てくる。学習指導要領が求めているのは、文法や語彙の知識を先に教え込んでから使わせるという順番ではなく、実際に聞く・読む・話す・書くという場面の中で、必要な知識に繰り返し触れながら使えるようにする、という指導の進め方である。

保護者が知っておくと役に立つ点

ここまでの内容は、学校で英語を教える側の目標や語数の「目安」であり、生徒一人ひとりがどこまで使いこなせるようになるかを保証するものではない。学習指導要領はそもそも、学校が編成する教育課程の基準であって、個々の生徒の到達度を定めた文書ではない。この性質を踏まえると、保護者にとって役に立つ点は次のように整理できる。

  • 学校の授業で扱う語数・領域(やり取り・発表・書くことなど)は、学年ごとに文部科学省の文書で決まっている。何を今学んでいる時期なのかは、この目安から見当がつく。
  • 「話すこと」が「やり取り」と「発表」に分かれているため、家庭で英語に触れる機会をつくる場合も、その場で答える力(やり取り)と、準備して話す・書く力(発表・書くこと)のどちらを伸ばしたいのかを意識すると、学校の授業内容と重なりやすい。
  • 語彙・文法は「言語活動を通して」繰り返し触れることで身に付けることが前提になっているため、教科書の単語や文型を単独で覚える練習と、実際に使ってみる練習の両方が必要になる、という組み立てになっている。
  • 英検など検定試験ごとの出題範囲・語彙数は、学習指導要領とは別の一次資料(日本英語検定協会が公表している英検CSEスコアの情報など)にもとづいている。学校の学年と英検の級を直接対応させた記述は学習指導要領そのものには存在しないため、級ごとの目安を知りたい場合は検定側の情報を確認するのが確実である。

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井本一志(士心塾 代表・CCN ENGLISH)

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